Ennyanja Nalubaale- ビクトリア湖

2012/11/15

キリマンジャロ登山~2nd Day~

3000m Machame Hut  8:45~
3800m Shiera Camp  ~13:40


総歩行距離9km


 ボクは悲しかった。達成をしたからだ。いつのころからか、やりたいことの一つだったキリマンジャロ登山。挑戦するという高揚感も、期待感もなく、ただ何か虚無感というか喪失感を感じていた。
 うっそうと生い茂る森を進みながら、この喪失感はなんだろうと考えてみた。
 一つは抱いてきた「やりたいこと」が消えるという喪失感。それを、他のメンバーに伝えると、「やりたいことができるというだけでも感謝すべきものだよ~、誰でもできるわけじゃないんだから。」そのとおりだ。もう一つの虚無感。無力感だ。それは僕が何かのスキルを手に入れたり、そのために努力をしたきたわけではないからだ。キリマンジャロ登山は勝ち取ったものではないのだ。ただ、やりたいことを自分の責任においてできる年齢になったというだけだった。「アフリカ最高峰に登りたい」と思い描いた頃から何も変わっていない。ただ無為に年を重ねただけかもしれないという時間に対する喪失感でもあった。
 でも世の中のこと大半がそんなものかもしれない。タバコや酒は精神的に子供でも20歳になればコンビニで買うことができる。

 と、そんなひねくれたものの見方をしてみたものの、ある帰結点にたどり着く。

こだわりすぎ。

 こだわることで、道すがら端に咲く花を見落としたくはなかった。それは景色だったり、周りの動向、自分の感情だったりもした。だけど、山にいるときぐらいそれをなくしてみるのもありじゃないか。でないと、それこそ道端の花を見落としてしまう。

 前置きが長くなったが、2日目は午前中だけの行程。
 数字上楽に見えるが、足にくる行程。初日に比べ、斜度も高く、すべて登り。加えて、酸素が薄くなる。これからもっと薄くなるとはいえ、「薄くなり始め」は筋肉が驚く。

 登り始めの一本道が大渋滞。周りはポーター、クライマー、ポーターだ。8月はハイシーズン。登りやすい時期の上に、欧米では夏休みだ。10人以上の大所帯のパーティも入れば、父と息子の2人パーティなど様々。その横をポーターたちが軽々と登ってゆく。

 ボクは静かに、厳かに頂上を目指したかったのだが、喧騒があたりを包み込む。自分の登りたいスタイルではないと、心が乱れる。楽しくない。しかし山という場所がそうさせる力を持っているのだろう、発想の転換をしてみる。昨日マチャメゲートをくぐった者はみな家族なのだ。一緒に神の家へ足を踏み入れたお客なのだ。

 そう思えたことで急に別パーティとの仲間意識が芽生えてくる。

 辺りには、ガスが出てきた。景色は見えない。光が乱反射する中である白人女性が声をかけてきた。

「調子どう?楽しそうだね。昨日、キャンプサイトでムービーとってたでしょ?」

 ボクら4人は記録用として動画を撮影していた。内容はユーモアに富んだもの。クライマーが周りにいる中で撮影するにはちょっと赤面してしまうぐらいの。

「ありがとう。君もキリマンジャロ楽しんで。」と快くかえした。

 山は「いる」こと、"being"が楽しさの源だとはいうが、その状況を楽しめてこそ、「いれる」ことを感謝できる。

 ガスが晴れ、景色を臨めるようになってきた。いつの間にか一行は熱帯雨林から、木が少なくなるヘザー&湿原(Heather&Moorland)エリアへ差し掛かっていた。木は低くなり、ゴツゴツした岩が目についてきた。見上げると、キボ峰がボクらを待ち受けていた。見下ろすと、雲の上に出ていた。遠くにはタンザニア第2位の山メールがその頂をあらわにしていた。

 そんな時、ユリちゃんが高山病予防薬の副作用でダウン。山に入る前に冗談半分本気半分で「リタイヤしたらせつないよねー。」「先行くよ。とも先行って。とも言いづらいよねー」なんて言ってたら、その気まずさが現実味を帯びてボクと光成とコナンを襲う。そして、困惑も。
 RPGで例えると、勇者・盗賊・格闘家は健在なのに白魔道士がやられた、なんとも敵出くわしたくない状態。ガイドたちが彼女の様子を見ているため、することがない。でも不安。仕方がないから、カメラに手が伸びる。いっぱい写真を撮った。

雲海の向こうに見えるのがメールー山
 幸い彼女は30分ほどひとしきり吐くと、なんとか歩ける状態まで回復。歩をすすめることができた。この日は昼までの行程だったので、余裕を持ってこの日の行程を消化した。


 午後は遊ぶ時間。

 散歩をしたり読書をしたり。そして、ここShiera Campからシーラ峰が臨める。キリマンジャロには3つの峰がある。
 最も高い中央のキボ。2番目に高く(タンザニア側から見て)東側に位置するマウェンズ峰。そして西側にあり、最も古く、火山活動によって最初に隆起したシーラ峰だ。

 太陽はキボ峰を赤く染め上げ、クライマー、ポーター、ガイド、人種、立場、経験、すべてを無関係に山にいるすべての人間に何らかの感慨を起こさせ、シーラ峰の向こう側へと姿を消した。

シーラ峰に沈む夕日
 まあ夕飯時、すっかり回復したユリちゃんから男3人は「薄情者」と言われてしまうのだが・・・

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