Ennyanja Nalubaale- ビクトリア湖

2013/01/21

ウガンダのブガンダ王国の氏族性( クランシステム)



ウガンダには40を超える言語があるという。民族も多数派のガンダ族をはじめ、テソ族、カラモジャ族、ニャンコレ族など様々で典型的な多民族国家だ。

私の住む地域はガンダ族(現地語:バガンダ)の住む地域のブガンダ王国の西のはてにあたる。ブガンダ王国には国王(カバカ)がいる。しかし、主権国家としては機能しておらず、ウガンダ国内の一民族の一文化圏として機能している。ちなみに、最近テソ族の長についたのが、アメリカ留学中の若干21歳の女王様だそうだ。ウガンダ国内を旅行すると、民族の違いというか、キャラクターの違いを感じることが多くある。そんなブガンダ王国のクランシステム(氏族制度)について少し調べてみた。そしてブガンダ王国だけでなく、多少の差違はあってもほかの民族にも存在している。

ブガンダ王国には53の氏族(クラン)がある。そしてすべてのガンダ人がどこかのクランに所属している。動物や虫の名前のついたクランがほとんどだが、「キノコ」とか「編み棒」なんて名前のクランもある。

クランシステムは400年前には存在していたと考えられ、当時は現在の王朝とは別のものだったようだ。そして現在の王朝がチントゥ王の出現により立ち上がった。その後、さまざまなクランが王国の外部から持ち込まれたり、王国内部で分離・統合がおこなわれた。

クランは大きく4つに大別することができる。
1.北からきた6氏族(マンバなど)。チントゥ王出現以前から存在したクラン。
2.チントゥ王出現と成立時期を同じとする16の氏族(チマ族など)
3.ブニョロ地域出身のチメラ王によって持ち込まれた11氏族(ガビ族など)
4.その他20の氏族。個別にブガンダ王国へ入り、元のクランからの独立や統合によって形成されていった(エンテ族など)

クランの構造
6つの下部構造があり、下から
・Nyumba いち核家族
・Luggya 祖父の家族も含める
・Mutuba 曽祖父母までの家系図に拡大
・Lunyiriri 
・Ssiga
・Kasolya
 NyumbaとLuggya以降、どこまで拡大していくか調べられなかった。個人的に推量した。

それぞれの階層で意思決定プロセスは存在するが、社会的文化的に意思決定できないイシューについては、仲裁の制度がある。家族で意思決定できないことがらについては祖父母などの血縁が仲裁。それでもダメなら遠い血縁が仲裁。それでもだめなら・・・といったぐあいに、その頂点がカバカということになる。つまり、社会的な決定事項は家族や血縁で決めていきましょうよ、というもの。日本の氏族性(明治以前に限る)も似たようなものだったのではないだろうか。ウガンダでの社会的に重要かつ典型的なイシュー。それは誰を族長にするのかという課題だ。

これは私見だが、仲裁できる人間が近くにいる必要があるので、地域によってマジョリティのクランが存在していたと考えられる。しかし、車やバイクの導入や経済活動が優先、近代化するにつれクランの移動も激しくなったのではなかろうか。この前提にたつならば、今後ブガンダカルチャーの拡大、新クランの設立なんかも、遠い未来のことじゃないように思える。

このクランシステム、面白い特徴がある。

まずは名前。クランによってつけられる名前が決まっている。逆に言えば、名前を聞けばどのクランの人間かすぐにわかるのだ。とはいて、ひとつクランでつけられる名前が限られているので、よくかぶる。そんな時宗教名で区別されることになる。 同じカトゥンバでもフランシス・カトゥンバとサイード・カトゥンバは別人、というふうになるわけだ。例外はあるらしい。親は別のクランの名前を付けることも可能。また、族長の名前は決まっていて、誰が族長になっても決まった名前に変えなければならない。

双子の名前はクラン関係なく決まっている。
兄妹の双子はカト(兄)・ナカト(妹)。
姉弟の双子はバビリエ(姉)・ワサワ(弟)
など

ほかにも、特別な名前があってこれもクランに関係なくつけられる。
ムシシ。意味は地震。地震の最中に生まれた子供はこう名付けられる。
チワヌカ。意味は「落ちる」。突然生まれた子供だそうだ。


次に自分のクランのシンボルを傷つけてはいけないこと。
例えば、エンテ(牛)クランの人間は牛を殺せないし牛肉を食べられない。セネネ(バッタ)クランはバッタを殺せない・食べられない。

クランごとにダンスをするときの太鼓のリズムがちがうらしいが、一地域に多数のクランの人がいる現在ではミックスされているのではないかろうか。

インドのカーストシステムが同列カースト内での結婚を慣習としていた(インターカースト結婚が増えてきているらしいが)のに対し、バガンダクランシステムでは他クランとの結婚を義務付けている(自分の母親のクランの人間とも結婚できない)。それは本来の機能としては近親相姦を禁止するためであったに違いない。しかし現在の人口の増加と地域移動が平易になったことを考えると、慣習として残っているのではなかろうか。

ウガンダにいると、クランの名前をもらう外国人はおおい。ちなみに私は始めカスレ(チマクラン:サルのクラン)、今ではブケニャ(ガビクラン:ウガンダコブのクラン)を名乗っている。ボクの生徒たちがつけてくれた。名前を変えたのは誰も呼んでくれなかったから。ブケニャになっても誰も読んでくれないのは、「カイト」が発音しやすい名前だからだ。

よく村人が「お前は何クランだ」と聞いてくる。これは2つの理由があって、一つは兄弟かどうか。もう一つは恋愛対象・結婚相手として対象内かどうか。日本ではその人となりをみわける変数に「年齢」「性別」「職業・職歴」「出身地域」「免許(できること)」なんかを履歴書に記載するが、ウガンダではその人となりやそんな変数に「クラン」がある。

ほかのアフリカではどんなクランシステムがあるのだろう。

参考ブログ: in my life 「ふたごの名前はいつも」
                  http://ameblo.jp/chamachama105/entry-11382319841.html




ンガビ(ウガンダコブ) @マーチソンフォールズ国立公園

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