Ennyanja Nalubaale- ビクトリア湖

2012/08/02

個の問題意識と最後の砦。もう帰る。任期短縮。


私の配属先は今学期(5月末)からスタッフが大幅に増えた。私を含めて全14人。

そして、私は大きな打撃を受けた。一番信頼していた先生が配属先をさることになったのだ。
それは以前このブログでも紹介したセレスティンだ。この配属先で一番尊敬していたし、彼となら仕事をやっていて気持ちが良かったし、一緒にしたいと思っていた人物だった。

「ここに3年いる。もう十分だ。」
彼はカンパラで別の仕事をするという。

 彼は教師として意気込みも向上心も持っていて、「授業の質向上ミーティング」の発案者だった。学校後に先生たちが次の日の授業を「あーしたほうがいい」「こーしたほうがわかりやすい」と言いながら準備をする時間。これはかなり画期的なもので、私自身「彼がいるなら」と安心していた部分があった。しかし彼が去った今、これを継続できるか。いや、復活させる気を他のスタッフへ思い起こさせることができるか。授業の質向上という点でポイントになってくるだろう。

 気がつけば配属先で3番目の古株になってしまった。1年と少しで。だ。私の配属先は人の出入り・移動が激しい。日本的企業社会風にいいかえれば「雇用の流動性」だろうか。

 一般的な話だが、雇用の流動性がなさすぎるのは産業を硬質化させるが、ありすぎるのも発展しない。
 それは、いち組織というレイヤーに落とし込んでも同じことが言える。
 ある程度の流動性を確保しつつ、一人ひとりが3年~5年は一つの組織に属することは組織の発展には不可欠な要素だと思われる。それなしには暗黙知は暗黙知として定着しない。形式知(マニュアル)とすることも一つの方法だが、その必要性の理解なしには形骸化するのがオチだ

 だから私はセレスティンが起こした「授業の質向上ミーティング」を他のスタッフに強要しないし、プレゼントもしない。その必要性を認識するようにファシリテイトするのが私の仕事だと考えている。

 そしてこのスタッフの大幅増員と過多な流動性は私にひとつの問題意識をもたらしてくれた。

配属先「組織」に何かを残そうとしても残らないのではないか?
という仮定だ。なぜならヒトが流動的すぎるから。

 サステナビリティとかよくわからないものを重要視するこの業界で、協力隊員としてサステナビリティを担保しようとすると「マニュアル作成」や「システム構築」というところに収まる。しかし先ほどの必要性の認識なしにそれは形骸化への一途をたどることになる。そうやって残されたものが、壊れたまま放置さる井戸や病院の中でホコリをかぶっている医療機器なのだろう。もちろんウガンダ人自身が必要性を認識することができたならば(加えてヒトの固定化が可能な組織ならば)マニュアルとシステムは大きな力を発揮しサステナブルに発展していくことが可能だろう。

 ウガンダ人が気づかないもの(必要性)を外部者としてプレゼントしていくことが私の考える協力隊員の仕事だとおもう。しかし同時に彼らが壊れ井戸を直そうとしないのは、必要ないからだとおもう。もし本当に必要なら自分たちで直しているはずだろう。ここにこそ隊員としての能力やアイディアを注ぎ込んでいく。

ではいち隊員として「組織」に何かを残すことができないならば、どうするか。
シンプルに「個」に残るものを提供していけばいい。つまり、黙知を。

 そして、その暗黙知を具体的にするきっかけがあった。

「カイト、ちょっと見てくれよ」と同僚が見せてくれたある計画書だ。

プロジェクトタイトルはPoverty Reduction Project。具体的には養蜂を50の農家へトレーニングすることでその農家の収入を向上させ貧困を削減させるというもの。

 15ページぐらいある大作だった。前半の5ページはうちの配属先の歴史とかだった。(こんなのいらないから!!!)イマイチ何がしたいのか見えてこない。数字がそこにないのだ。50の農家にトレーニングを行ってどれくらいの収入増を期待するのか。どの程度の農家が収入向上するのか。など具体性に欠けるものだった。そしてナゼうちのNGOがそれを行うのか。いまいち伝わってこない。

私は、
現在の月収が○○shsでこれを養蜂トレーニングによってハチミツを生産させて月収を○○%向上させる。5農家でもいいから具体性を持たせたほうがわかりやすいんじゃない?
とアドバイスした。

 このセレスティンが去ったことと、お世辞にもドナーを納得させることのできない計画書を読んだことで2年間の中心となることをやっと手に入れた。

 今活動の中心はこれで、ここでできる最後のことだと思う。(もし、ある時点で必要ないと言われれば任地変更)

計画書の書き方とニーズ調査の方法のトレーニングだ。

 説得力のある(ドナーがつく)計画書を書く必要性を認識させ、それを書くための考え方(暗黙知)を伝える。さらに、それを書くための根幹(本当に必要なニーズ)を拾い上げる技術(調査手法)を伝え、スタッフの問題意識をマクロからミクロへ移行させる。(スタッフ自身も村人なので外側としてコミュニティをみることが難しいのだと思う。)

 個の問題意識を持つことができた人間はどんな組織でも生き残っていこくとができるだろう。

そして、きっと気づいてくれるはずだ。
ローカルNGOワーカーとして不可欠な3つの能力に。
・コミュニティを見る能力
・ドナーを獲得する計画書を書く・スペシフィックに考える能力
・ファイナンシャル能力

これが私の最後の大仕事。

というか、この程度のことしか気づくことのできないのが今の私でその程度の能力しかもっていないということなのだが、ウガンダに来て改めて無能さを確認した。

0 件のコメント:

コメントを投稿